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技術で勝って事業で負ける国

2026 8/28
社会問題
ペロブスカイト太陽電池 中国 太陽光発電 産業政策 経済安全保障

かつて、太陽電池と言えば日本だった。2000年代半ば、シャープは生産量で世界首位に立ち、日本勢が世界市場の半分近くを占めた時期もある。それが今では、世界シェアの8割超を中国製が占めている。環境省は従来型パネルの購入補助を2027年度から廃止する方針を固めたという。「価格が下がりきった輸入品に補助を出す意味はない」との理屈である。再エネ普及のための支援が、いつの間にか中国メーカーの売上を支えるものになっていたのだ。二十年やって、この結末である。

代わって予算が付くのが次世代型のペロブスカイト太陽電池である。27年度の概算要求は前年度の4倍の280億円。発明したのは日本の研究者で、主原料のヨウ素は日本が世界2位の産出国。軽く、薄く、曲がる。オフィスビルの壁面や、既存住宅の耐荷重の低い屋根にも設置が見込める。国は積水化学の量産化に最大1,572億円の補助を決め、2040年に原発20基分に相当する導入目標を掲げた。今度こそ国産の技術で、ということである。

しかし、ペロブスカイト太陽電池の特許出願件数ではすでに中国に逆転されている。中国の電池最大手CATL系の企業はギガワット級の工場を建設し、来年にはキロワット時15円という発電コストを目標に掲げる。対して日本では、積水化学が堺に建てるラインは100メガワット、国の掲げるコスト目標は2030年で14円となっている。規模でもスピードでも先を行かれている。さらに中国GCL系の企業は今年、日本国内での量産販売を始めるという。日本が開発し、中国が量産する。シリコン系と同じことが、繰り返されようとしている。

支援の目的は、輸出産業の育成ではなく経済安全保障だという。国内で作り、国内で使う。それなら中国メーカーと競わずに済む、という理屈である。しかしシリコンの敗北は海外市場で起きたのではない。国内市場まで輸入品に明け渡すことになった結果だ。日本が頼みとするフィルム型や建材一体型の高付加価値路線も、特許の優位を失った以上、追随されるのは時間の問題であろう。しかも世界の開発の本流は、シリコンと重ねて効率を稼ぐタンデム型に移りつつある。フィルム単体に賭ける日本は、たとえニッチを守れたとしても、主流からは外れていることになる。

ガラパゴス携帯は、独自の規格ゆえに海外メーカーが参入しにくく、少なくとも国内では勝てていた。だが、ペロブスカイト太陽電池ではそうはいかない。低コストを武器にした量産品が、最初から国内に入り込んでくる。支援の重点化そのものは否定しない。ただ、280億円という規模ありきで、中身を精査せずに額だけを決めていないか。現在の状況を分析したうえでの支援でなければ、規模でもコストでも先行する相手に、また追いつけないまま終わる。技術で勝って事業で負ける。この国はその教訓に、あといくら払えば気が済むのだろうか。

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