スーパーの会計が、今年4月から高く感じるようになった。最低賃金は上がり、春闘も5%台である。それでもレジの支払いのたびに、ため息が出るくらい高い。日銀は2026年度のコアCPIを2.5%と見込む。本当にそんなものなのか。
2.5%は、日銀が7月の展望レポートで示した2026年度の見通しだ。4月時点の2.8%から下がっている。総務省の全国CPIだと、6月の総合は前年同月比+1.7%で、生鮮食品を除く総合(コア)は+1.6%。生鮮食品とエネルギーを除く総合は+1.7%である。コアは2月から5カ月連続で1%台となっている。2025年度平均のコアは+2.7%だった。前年よりも値上がりを急激に感じるのはなぜなのだろうか。
| 指標 | 時点 | 前年比 |
|---|---|---|
| 総合CPI | 2026年6月 | +1.7% |
| コアCPI(生鮮除く) | 2026年6月 | +1.6% |
| コアコアCPI | 2026年6月 | +1.7% |
| 食料 | 2026年6月 | +3.2% |
| 生鮮除く食料 | 2026年6月 | +3.1% |
| 購入頻度の高い品目(月1回以上) | 2026年6月 | +2.5% |
| 日銀見通し(コア) | 2026年度 | +2.5% |
どの期間のどの数字で、何を除いた指数かで、意味はまるで違う。見通しと実績、年度と月次、総合と食品は、まったく別の数字なのだ。そう区別すれば、日銀見通しの+2.5%の見方も変わってくる。
では、なぜレジの支払いで高くなったと感じるのか。コアCPIは生鮮食品を除き、帰属家賃などを含んだ指数なのだ。帰属家賃とは、自分で所有する持ち家に住む人が「自分に家賃を払っている」と仮定して、その家賃相当額を計算する仕組みである。実際にお金のやり取りはないが、GDPやCPIには含まれる。現に、持家の帰属家賃を除く総合は6月でも+1.9%で、コアより高い。前年比は「去年より何%高いか」であり、「何年かけていくら高くなったか」ではない。米の店頭価格は前年比では下がったが、水準は2020年の約2倍のままである。実感との乖離を生む理由の一つが、ここにある。
家計調査では、2025年のエンゲル係数は28.6%と44年ぶりの高さだった。食料支出は名目で増え、実質では減っている。量は減っているのに支払いは増えている。2026年4月は、その対比がはっきりしていた。公式のコアは、給食無償化や保育料、ガソリン補助などの政策要因もあって+1.4%まで縮小した。同じ4月、帝国データバンクの調査では、食品メーカー195社で2798品目が値上げされ、1回あたりの平均値上げ率は14%となった。4月以降に強く実感するようになった理由がここにあるのかもしれない。
2,000円で済んでいた買い物が、いまは3,000円近くかかる。半年前の約1.5倍だ。物価指数とかけ離れているのは、なぜだろうか。購入する商品や容量、まとめ買いによって金額は変わってくる。それも金額を押し上げている。
統計だけ見れば、賃金も改善している。2026年度の最低賃金の目安は全国加重平均1176円、+55円(+4.9%)である。上げ幅は、過去最高だった前年の+63円(+6.0%)より縮小したが、実質賃金は今年1月から6カ月連続でプラスだ。春闘の最終集計も5.01%だった。
それでも実感が薄い理由は、「物価がまだ高いから」だけではない。2022〜2025年の実質賃金は4年連続マイナスだった。6カ月連続プラスでは、穴埋めにはまだ足りない。連合が4月に行った調査では、「物価に賃金が追い付かない」が6割だった。持続的な物価上昇と労働分配率の低下によって、賃金の上昇分が相殺されている。その結果として、実質賃金の水準は「1990年代初頭」の時代に引き戻されているというデータがある。毎月勤労統計の実質賃金指数は、ピーク時の1997年から1割以上低下しているのだ。実感としては、35年前に近い。
問題は、なぜ「1990年代初頭」の実質賃金の水準に戻っているかだ。大きな要因として、通貨価値の下落がある。アベノミクス(異次元緩和)と、それを引き継ぐ「責任ある積極財政」が原因と言われている。それが、金融市場における円の供給を極端に増やし、日米金利差を固定化した。その結果、歴史的な円安となり、輸入物価の高騰を招いた。これが、実質賃金を押し下げた主因の一つだ。実は、それだけではない。小泉政権下の「構造改革」が、「賃金が上がりにくい構造」をつくる転換点になった、との指摘もある。これが、失われた30年の正体なのかもしれない。
だとすれば、小出しの物価高対策では効果がない。円の価値を上げる方向へ、金融政策と財政運営を転換することだ。高市内閣が「責任ある積極財政」の看板を掲げたまま円安を放置するなら、コアCPIが何%に落ち着こうと、物価高は終わらない。指数の落ち着きを、レジの支払いで実感できる日は、政策が変わらない限り来ない。
参考リンク
- 総務省「消費者物価指数」2026年6月分(2026年7月24日公表)
- 厚労省賃金課資料(購入頻度階級別:月1回以上+2.5%、未満+1.6%。持家の帰属家賃除く総合+1.9%)
- 日銀「経済・物価情勢の展望」2026年7月(2026年度コアCPI見通し中央値+2.5%)
- 帝国データバンク「食品主要195社価格改定動向調査 ― 2026年4月」(2798品目、平均値上げ率14%)
- 6月の実質賃金1.6%増、6カ月連続プラス 夏季賞与伸び|日本経済新聞
- 最低賃金55円引き上げを答申 目安実現で全国平均の時給1176円に|福祉新聞
- 総務省「家計調査」2025年(エンゲル係数28.6%)
- 実質賃金、昨年度0.5%減 物価高で4年連続マイナス―厚労省|jiji.com
- 【物価上昇・給料上がらない】資産を目減りさせない防衛術|えんfunding

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